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<   2007年 07月 ( 1 )   > この月の画像一覧

アメリカのオハイオ州の片田舎で6月に起きた妊婦失踪事件
事件発生から約一週間で最悪の結果と共に幕を下ろした。

26歳であった被害者のジェシー・デイビスは
失踪当時妊娠9ヶ月で、報道機関は一斉に
"Missing Mom"の事件の追報をBreaking Newsとして報道し続けた。

未婚であった彼女には、既に事件発生当時2歳の息子がいたが、
唯一の事件目撃者であった彼が
"Mommy is crying." (ママは泣いている)
"Mommy is in the rug." (ママは絨毯にくるまれている)
とだけ繰り返し語ったこと、
そしてかなりの数の地元住民がボランティアとしてジェシー発見のための
捜査に加わったことが、マスコミに大きく取り上げられた。

結局、1週間後、彼女のボーイフレンドであった
ボビー・カッツが殺人容疑で、
またボビーの高校時代からの友人、
ミーシャ・ファレルが死体遺棄容疑で逮捕された。

私が驚いたことは、事件発生直後からテレビに出ずっぱりであった
被害者家族の会見である。

日本なら、被害者家族はなるべくマスコミから顔を隠し
容赦なく照らしつけるカメラのフラッシュや
インターホンの嵐に耐え、世間から自らを隔離しようと
必死になるところである。

ところが、この被害者女性の家族、特にその母親のプレゼンスたるもの
ものすごいものがあった。
捜査の途中も、我が娘がどれだけ素晴らしいか、
どれだけ正しい道を歩んできたかを堂々とテレビカメラの前で語り
日に日に疲労がたまる顔のまま、毎日毎日全米に映される画面の中に姿を現した。
そして、いざ遺体が発見された後も、夫、被害者の妹と共に3人で記者会見に臨み
自分の心情について、とうとうと語った。

「あの子は、ただ毎日を普通に過ごしていました。
思い出すことは、あの子が仕事を終えて、彼女の息子を保育園からピックアップして
家へ戻ってきてから・・・そう、そんな何気ない一日の終わりに
テレビの前で足をパタパタさせながら、その日あったことを笑いながら
話す姿・・・そして明日も早いからといって9時には寝てしまうような
そんなあの子の姿です。
そんな自分の子が・・・あぁ、ごみ置き場のところであの子が着ていた
モヘアセーターのピンク色を見つけた時の気持ちといったら・・・
表現することなどとてもできません。」

時折嗚咽しながら、とても表現豊かに遺体で発見された娘の事を語る
被害者の母親の姿に、私は唖然としていた。

そんな被害者家族の姿を、日本のテレビの中で見るのはまず不可能な話である。

「容疑者としてボビー・カッツ・ジュニアが逮捕されましたが
どう思われますか。あなたは最初から彼が犯人だと思っていましたか」
という記者の問いには
「私は彼が犯人ではないことを祈っていました。
このような結果となってしまったことはとても残念です。
私はただ神を信じ、神が正しい審判を下してくださると信じています」
と強い口調で答えた。


様々な記者からの問いに、自分の言葉で答えるこの母親の姿に
私は最初とても心を打たれていたが、次第に混乱してきた。
我が子の死体が発見されたその日に、こうして大勢の人の前で
その心情をとうとうと語れる母親の気持ちを、
自分の中で投影できていないと気づいたからだ。
自分の中でもまだ混乱し、大きなショックを受けていながら
「世間」にどんな言葉を発することができるというのか。

しかし、don't give a damn to 「世間」、あたしにゃあたしの言い分があるのよ!
というアメリカ的マインドがあってこそ、こういう記者会見ができるのかと思うと
その堂々とした姿勢に感心をする一方、
どこか敏感さがないようなアメリカ的ナイーブさに驚かされた。

後になって知ったが、アメリカではこうして被害者が捜査の全面に出てくることは
当たり前のことだという。
皆それぞれ思うこと、感じる事をそのままに伝え、涙を流し、
カメラは恐れるものではなく、使うものなのだという。
メディアを通じて捜査が発展することもあれば、錯綜することもあるが
大切なことは、あれだけ大きな国土の中で、
より多くの人の注意を引き付けることなのだろう。

これは少し極端な見方だと思うが、
事件の凄惨さや残酷性を是非本として出版しましょうという話や
映画にして後世に残しましょうという話が方々から飛んできて
お金持ちになれるから、という意見もあった。

悲しみまでにも資本主義が根を張る国である。
いや、混乱の中にあまりにも理不尽な悲しみが多いからこそ
せめて金くらいとってやる!という気持ちになるのかもしれないが。

アメリカである。
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by akkohapp | 2007-07-29 20:57 | NYC, USA