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<   2005年 09月 ( 3 )   > この月の画像一覧

通学路

朝9時。
ラッシュタイムのDC。
チャイナタウンのステーションは、健康的な朝の空気で満ちている。
朝シャンで湿り気のある金髪をなびかせたスーツのおねえさん、
フリーペーパー"Express"を読みながら次の電車を待つビジネスマン、
分厚い物理学の教科書を抱えた学生・・・

イエローラインからグリーンラインに乗り換える。
手すりに寄りかかって、電車がプラットフォームに滑り込むのを眺めている。
薄暗い構内に、柔らかい黄色のライトが点滅して、間もなく電車のドアが目の前で開く。
降りてくる人たちの肌は、見事なチョコレート色だ。

路線によって乗客の人種構成が明確に分かれるのは、アメリカでは普通のことだが
目が慣れるまでは、やはりいちいち驚いていた。
ハーレムに向かうニューヨークのレッドラインも、
黒人の乗車率はかなり高いが、DCのグリーンラインはそれ以上だ。

ほとんどの乗客がチャイナタウンで降りてしまうため、
ガラガラに空いた車内に乗り込み、だいたいいつもドアに一番近いシートに一人で座る。
二駅目のShaw-Howard University駅で下車。

地上に上るエスカレーターに乗るけれど、
自分の前の段も、その前の段も、その前の段も、
乗っているのは黒人だ。
後ろを振り向いてみなくても、何色の肌をした人が
自分の後に乗っているのかは明確だ。

駅から学校までは徒歩10分。
Howard Universityのロゴが入ったカバンやノートを抱える学生に混じって
ストリートを歩く。
床屋、CD屋、サンドウィッチ屋を通り過ぎて、横断歩道を渡る。
ゴミ箱みたいな形をした新聞売り箱に35セント入れて買ったワシントンポストを
脇に抱えて、ちょっと早足で歩く。

この辺のストリートは、とにかく汚い。
ジョージタウン周辺と同じ都市だとは思えないくらい
道端に色んなものが落ちている。
捨てられたガムが、化石みたいになって無数にストリートに模様を作っている。
木曜日になると週末イベントのフライヤーが、お好きにどーぞとばかりに
その辺に撒かれている。
そういえば、横断歩道の近くには白い粉が落ちていたこともあった。
なんの粉だかは、よくわからないけれど。

そんな通学路だったけれど、
私はその朝の10分が大好きだった。
帰り道は、ちょっと物騒な雰囲気がし出して、
あまり一人で歩きたくなかった道だけど、
朝はいつも清潔で、優しかった。
9月のちょっと涼しくなった空気と、
まだしぶとく残っている夏のにおいが混じった朝の光の中、
毎日毎日一人でその道を歩いた。

床屋のおじいさんは、お客もいないのに毎朝8時台から店を開けて
奥の椅子に一人で座って、ストリートを眺めていた。
道を挟んで反対側にあるダイナーでは、朝ごはんを食べる人たちが
黒々と窓際に頭を並べていた。

人間が生きている音や匂いがたくさんしたあの道が
いつも私を学校まで運んだ。


たった10回くらいしか通わなかった通学路だけれど。
Howardでの短いキャンパスライフを思い出すとき、
いつも最初に立ち上がる風景は、
あの朝の通学路だ。
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by akkohapp | 2005-09-30 20:45 | Howardってところ。

Malcolm X

ハーレムのストリートは「道」ではない。
他の場所では、ストリートは「通るもの」であり、
常にそこは通り「過ぎてゆく」ものなのだが、
ハーレムでは違う。
決して快適とは言えない蒸し暑い気候なのに
みんなストリートに椅子を持ち出して
何をするでもなく、ただ座って仲間と談笑したり
ただただ道行く人を眺めたり。
ハーレムでのストリートは「座るもの」であり、「遊ぶもの」であり、
「食べる場所」であり、「音楽を聞く場所」であり、
決して過ぎ行くものではない。
静止しているそこは「場」であり「道」ではないのだ。

そんなことを考えつつ、部外者の自分にとっては
あくまでも「道」であるだけのストリートを10ブロックほど歩く。
135丁目のSchomburg Center for Research in Black Cultureには
Malcolm Xの生涯の布石が数々の写真と共に展示されていた。
本で読んだ通り、小学生の彼はクラスに一人の黒人。
最後列で笑うその顔は、明らかに他の子ども達と違う何かに囲まれていて
才能やカリスマ性というものは、やはり先天的なものなのかと思う。
あんなにハッキリした目をしている小学生は、まずいない。
興味深いことに、ストリートでゴロツキのようなことをしていた頃の彼の写真には
その目の中に鋭さが見られず、人の英知はこんなに外見に現れるのかと驚いた。

Nation of Islamに傾倒してゆくMalcolm。
ついさっき歩いてきたハーレムのストリート、コーナー、そこここで
たくさんの人々に囲まれて演説をしている。
白人の女性と関係を持ったことで刑を課せられた彼は
受刑中に辞書に載っている単語を最初から最後まで覚え
教養を身につけたという。
彼を取り囲む人々の目のイキイキとしていること。
サンタを見る子どものような顔つきで、彼のスピーチに聞き入っている。
貧しい生活を送る中で
自分のアイデンティティや、過去に阻まれている時に
Malcolmのような人が流星の如く現れて、
「自分自身にプライドを持て!」とか
ちょっと小難しく、頭良さげに堂々と話し始めたら
そりゃあみんな勇気付けられただろう。

白黒写真の中にみるMalcolmは、どの姿もシャンとしていて
眼鏡の奥には賢さが溢れている。
群集の中にても、そのカリスマ性がビカーっと発信されているんだけど
その一方で、長身の背中のどこかに
全ての人が感じる寂しさや、家族への愛、
愛する者を守りたいという当たり前の弱さも見て取れて
そんなところに人々は魅かれたのではないかと思った。

唯一あったカラー写真は、中東を訪問した際にとられた
モスクの中で祈る彼の姿だった。
一人の人間としてとても脆そうで、
けれど祈りはとても強くて、
たくさんのものと戦い、多くのものを背負いながら、
そうして静かに神を信じ、それに話しかけている姿は
あまりにも無防備で、美しかった。

Nation of Islamと対立し、教団を脱退、
一人になったMalcolmと公民権運動の隆盛、
そしてハーレムでの暗殺。
4人の子どもを持ち、さらに双子を妊娠しながら
目の前で夫を亡くした妻の横顔は
まだ悲しみが追いついていない表情であるようにも見えたし
こうなると分かっていたわ、と悲しみを呑み込もうとする顔にも見えた。

涙が出てきて、鼻をすすりながらカラーの写真をもう一度見て、
会場を去った。

思ったとおりの声だったMalcolmの声が
TVから流れ続けていた。
低くもなく、高くもなく、ハッキリとした発音。

彼が多くの人を惹きつけ、彼らの魂を揺さぶったのは
当然のことだったことがよくわかった。
その証拠に、今もハーレム中からこんなにも人が
この展示場に集まっている。

静かな英知を持ち、過激な言葉を飛ばしたMalcolm X。
今もハーレムのハートとして、人々の心の中に生き続けている。
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by akkohapp | 2005-09-17 20:44 | race and ethnicity

ウンニョーク

NYに着く。
揺れすぎのRed Lineに乗って116丁目で下車。
Lenox Ave.を買ったばっかりのCDを聞きながら
120丁目に向かって歩く。
まだアーティスト名も覚えてない。

119丁目を越えたあたりで、犬のウンコを思いっきり踏む。
ものすごい悪臭につきまとわれ、泣きたくなる。
ウンが付いたとか言っている場合ではない。
戌年の私は匂いにウルサいのだ。
臭いのはマジで勘弁だ。

アキツさんに会うも、
開口一番
「ウンコ踏みました。」

こんな無礼な客も温かく迎えてくれたアキツさん。
ハーレムのど真ん中で、
可愛らしい小物と、カラフルなTシャツに囲まれた彼女は
ものすごーくキュートに見えた。
キュートとか生意気に形容してしまうのもいかがなものかと思うけど
そのキュートさの中にも、タフに生きてゆく人間のしなやかさが見えて
まぶしかった。


今回のNYはすごく寂しい。
いつも一人のNYだったはずなのに、
DCでいつも友達や学生に囲まれていたせいか、
孤独が自分の中で強調されて寂しい。
こんなにたくさん人がいる街なのに、
自分は一人なんだなぁと思ってしまった。
メールをする人も、ハガキを書く人も特にいない。
夜のエンパイヤーは緑色に光って、雲の中にてっぺんを隠している。
タイムズスクエア周辺は、相変わらず100言語くらいで溢れていて
ストリートには土産物屋台が並ぶ。
金曜日の夜をリムジンが駆け抜け、着飾った金髪の女の子たちが
窓から身を乗り出して絶叫している。

今回のNY訪問で初めて
人が多すぎる、
多様性が過ぎる、
とついに思ってしまった。
一人でいるからかもしれない。
このごたまぜモツ煮込みみたいな街の中で
一人で行方知らずになっても、
誰も自分のことを探しようがないだろうなぁと
つまらないことを思ったりする。

一人を考えさせる街。
一人の街。
こんなに寂しい街を
他に知らない。

On Broadway
About me young and careless feet
Linger along the garish street;
Above, a hundred shouting signs
Shed down their fantastic glow
Upon the merry crowd and lines
Of moving carriages below.
Oh wonderful is Broadway -Only
My heart, my heart is lonely.

Desire naked, linked with Passion,
Goes strutting by in brazen fashion;
From playhouse, cabaret and inn
The rainbow lights of Broadway blaze
All gay without, all glad within.
As in a dream I stand and gaze
At Broadway, shining Broadway -only
My heart, my heart is lonely.

Claude McKay
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by akkohapp | 2005-09-17 20:02 | NYC, USA