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カテゴリ:Howardってところ。( 2 )

Kore ha kasa desu ka?

授業と授業の合間にボランティアでTAをすることになった初級日本語の授業は、
ハワードでの短いキャンパスライフを最もカラフルに彩る90分間だった。

ズラリと教室を楕円にとりかこむ例のアメリカ式机付きの椅子に座る学生たちは
圧巻、と形容するのがピッタリなほど皆個性的で、一人一人の顔と名前を
覚えてゆくことを心から楽しんだ。

一番こちら側に座っていつも目をクリクリさせていたカーリーヘアーの子は
時々目が合うと恥かしそうに下を向いていた。
あれきさんだーさん、だ。

はんすふぉーどさん、はやる気なさそうに見えて実はやる気に満ちている。
いつもキャップを斜めに被って、あと少しで椅子からずり落ちてしまいそうなくらい
姿勢を崩しているけど、発音を練習する時は口をしっかり開けていたのを知っている。

例のカトリーナ被害でニューオリーンズから転校してきたばかりのジョナサンは
何故か全ての単語をスペイン語風に話してしまう。
「これ~・・・ど?」
「こんにちぃいいた??」

肉付きの良いジャスティンは日本のアニメ大好き。
「あきこ、なぜ日本人は愛してると言わないのか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「プライベートでは言ってるはずdesu」
愛は密かに交わす国民代表として答えておいた。

いつも胸がこぼれるんじゃないかというキワドイ服を着てるクリスティーナは
そんな外見でもまだ2年生で、うまく話せなかった時に言う「ごめんなさい」が
とてつもなく可愛らしかった。

将来は肝っ玉おかあちゃんになるんだろうなぁ~と思わずにいられないスティシー、
アフロが素敵なばーど、
ラッパー"Killakam"のニックネームをつけられたキャメロン、
そして何を言ってもなぜかコメディアン口調になってしまうジェリー・・・

初級のクラスだったこともあり、クラス全体に沸き立つ若さが漂っていた。

みんなカワイイねぇ~~いいねぇ~~ とすっかりオバチャンな雰囲気でTAをしていたが
その中一人、目を惹く男の子がいた。

初めて彼の醸し出す静かな空気に気が付いた日、
彼は白いシャツと白いドゥラグ、ジーンズといういでたちで、
だからなのか彼をイメージするとき、
いつもそこには白い静かな空間が浮かび上がるように思う。
とても静かな目で、真剣に先生のレクチャーに耳を傾ける彼の顔を今でも思い出す。

彼のミニテストの結果がいつも完璧なのに気が付くのにそう時間はかからなかったし、
「これ・あれ・それ・どれ」の説明を
ヤマキタ先生が英語で充分にしきれなかった時に、
手を静かに挙げて、クラス全体に英語でサッと説明したのも彼だった。
本名はポールだけど、Akilで通ってるんだよ、とカフェテリアで会った時に教えてくれた。
デザートのアイスクリームを舐めながら、ふぅ~ん、
その"l" に "<"を足して"K"にして"O"付けたら私の名前じゃん、と言ったら
ちょっとはにかみながら、そうだね、と言っていた。

何回か一緒にカフェテリアでランチを食べた。
木曜日はいつもカフェテリアのごはんがちょっと豪華で、
チキンを配るオバチャンにいつものように意地悪されても
カラーグリーン、パリパリのチキン、マッシュポテトと三点揃った完璧なソウルフード学食の
トレイを両手に、チキンをもらうのにどれだけ並ばされたかを二人で自慢しあった。
19歳の誕生日を迎えたばかりの彼をベイビー扱いしていたら、怒られた。
その怒り方がとても19歳らしくて、私はニヤニヤしながらサラダをつついていた。


TAをやってみるのは、今回が初めてで、
クラス全体の前に立つ、という経験自体初めてだったが、
前に出てみることによって、クラス全体の顔がよく見えることに驚いた。
年が大して変わらなくても、誰がどんな人なのか、どんな人間のあたたかさ、冷たさを
持っているのかがよく見えた。
みんな、良い魂を持つ子たちだったなぁ、と思う。
「よ」をつかうconfirmation formの練習、
「傘です よ」
「花です よ」
の時にはお決まりの "yo" "yo" コールが響き渡ったことを懐かしく思い出す。
絶対なると思ったけど、その通りだったな。

先日、クラス全体に宛てて送ったカードが届いて
ヤマキタ先生が授業中にそのカードをみんなに回してくれたらしい。
反応はどうだった?と今でも連絡を取り合っているジャスティンに訪ねると
こんな答えが帰って来た。

Girls: "Awwwwwwwwwwwww!!!"
Guys: "Cooooooooooooooool!!!"


・・・なるほどクラスの様子がとてもよくわかった。

懐かしのJapanese I。
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by akkohapp | 2005-10-31 22:06 | Howardってところ。

通学路

朝9時。
ラッシュタイムのDC。
チャイナタウンのステーションは、健康的な朝の空気で満ちている。
朝シャンで湿り気のある金髪をなびかせたスーツのおねえさん、
フリーペーパー"Express"を読みながら次の電車を待つビジネスマン、
分厚い物理学の教科書を抱えた学生・・・

イエローラインからグリーンラインに乗り換える。
手すりに寄りかかって、電車がプラットフォームに滑り込むのを眺めている。
薄暗い構内に、柔らかい黄色のライトが点滅して、間もなく電車のドアが目の前で開く。
降りてくる人たちの肌は、見事なチョコレート色だ。

路線によって乗客の人種構成が明確に分かれるのは、アメリカでは普通のことだが
目が慣れるまでは、やはりいちいち驚いていた。
ハーレムに向かうニューヨークのレッドラインも、
黒人の乗車率はかなり高いが、DCのグリーンラインはそれ以上だ。

ほとんどの乗客がチャイナタウンで降りてしまうため、
ガラガラに空いた車内に乗り込み、だいたいいつもドアに一番近いシートに一人で座る。
二駅目のShaw-Howard University駅で下車。

地上に上るエスカレーターに乗るけれど、
自分の前の段も、その前の段も、その前の段も、
乗っているのは黒人だ。
後ろを振り向いてみなくても、何色の肌をした人が
自分の後に乗っているのかは明確だ。

駅から学校までは徒歩10分。
Howard Universityのロゴが入ったカバンやノートを抱える学生に混じって
ストリートを歩く。
床屋、CD屋、サンドウィッチ屋を通り過ぎて、横断歩道を渡る。
ゴミ箱みたいな形をした新聞売り箱に35セント入れて買ったワシントンポストを
脇に抱えて、ちょっと早足で歩く。

この辺のストリートは、とにかく汚い。
ジョージタウン周辺と同じ都市だとは思えないくらい
道端に色んなものが落ちている。
捨てられたガムが、化石みたいになって無数にストリートに模様を作っている。
木曜日になると週末イベントのフライヤーが、お好きにどーぞとばかりに
その辺に撒かれている。
そういえば、横断歩道の近くには白い粉が落ちていたこともあった。
なんの粉だかは、よくわからないけれど。

そんな通学路だったけれど、
私はその朝の10分が大好きだった。
帰り道は、ちょっと物騒な雰囲気がし出して、
あまり一人で歩きたくなかった道だけど、
朝はいつも清潔で、優しかった。
9月のちょっと涼しくなった空気と、
まだしぶとく残っている夏のにおいが混じった朝の光の中、
毎日毎日一人でその道を歩いた。

床屋のおじいさんは、お客もいないのに毎朝8時台から店を開けて
奥の椅子に一人で座って、ストリートを眺めていた。
道を挟んで反対側にあるダイナーでは、朝ごはんを食べる人たちが
黒々と窓際に頭を並べていた。

人間が生きている音や匂いがたくさんしたあの道が
いつも私を学校まで運んだ。


たった10回くらいしか通わなかった通学路だけれど。
Howardでの短いキャンパスライフを思い出すとき、
いつも最初に立ち上がる風景は、
あの朝の通学路だ。
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by akkohapp | 2005-09-30 20:45 | Howardってところ。