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Life is Like A Box of Salt Water Taffys

彼はいつも、ワイングラスを丸く包み込む時の手つきで、私を扱う。
とても上品な手のしぐさが、最初会ったときから好きだと思った。
ユラユラとグラスの中で揺れるようなワインのような気持ちになりながら
小さな頃に母親に撫でられたときの記憶を取り戻す。
そう伝えると、小さく笑って「じゃあお母さんにもなってあげる」と
やさしい目で言った。

Grand Central駅構内にあるワイン屋で買った白ワインは
鳥カゴの中にオレンジ色の金魚が入っているオーストラリア産のもので
果物っぽさがとても美味しくてあっという間に空けてしまった。
マスカット色の透明の水を、ゆっくり揺らすグラスを包む手。

いい年なのに、面白いくらい感情を揺らし合うこのつながりを、
心から愛おしく思う。
いい大人が、2人して他愛ないことで口ゲンカを繰り返し
それでも求め合う求心力を、心底大切にしている。


Coney Islandでは、レトロを通り越して、ちょっと怖いくらいの遊園地で
グルグル猛スピードで回る観覧車に乗った。
例のごとく、何かで口ゲンカをしていたので、
私が10ドルを出して、高すぎるよとボヤく彼を半ば強引に赤い鉄格子の箱の中に押し込む。
ユラユラ揺れながらてっぺんまで上ると、左手には大西洋、
右手にはブルックリンのプロジェクト群がそびえ立つ。
その向こうに見えるのがマンハッタンをつなぐブルックリンブリッジだ。

キャーキャー叫びながら、仲直りをした。

海沿いに並ぶ売店で、Salt Water Taffyを買う。
キャラメルを長くしたみたいなカラフルなそれを、flavorを探り合いながら
口の中に放り込む。
バナナと思ったらレモンで、
ミントと思ったらシトラスで、
何だか人と人の出逢いのようだ。

大西洋沿いを、強い潮風を受けながら歩く。
彼はもう4コ目のtaffyを口にほおばっている。
プロジェクトの合間にある公園では、ハンドボールに興じる若い人たちや
イタリア語でおしゃべりに花を咲かせる老人たち、
浜辺ではしゃぐ黒人の学生たち、
様々な人種がゴチャゴチャに交じり合いながら、ゴチャゴチャに色んなことをして
晴れた午後の時間を刻んでいた。
それぞれの人たちを観察しながら、いろんなことを言い合い、
ケンカをしたことなんて嘘のように、手をつないでデッキの音を鳴らしながら歩いた。
時々あどけない顔で笑う顔が、少年のようで、私も子どもみたいに笑う。
海辺では、誰もが優しくなるのかもしれない。

ロシア語らしき看板を掲げたレストランを見つけ、
気がつくと周囲の人たちは皆寒い大陸の言葉を話している。
こんなところにロシアの人たちのコミュニティーがあったんだ、と驚く彼。
一緒に新しいものを発見すると、とても嬉しくなる。
海辺から離れ、街のほうに向かって歩く。

どこの国の言葉か分からない色とりどりの看板にあふれた街は
夕暮れの買い物時とあって活気付いている。
ユダヤ教会、シシケバブ屋、ダンキンドーナツ、ロシアンマーケット・・・
カラフル街角に、Beautifulを連発する彼。
こればっかりは、ニューヨークじゃないと味わえないね、と繰り返し言う。
本当に、その多様性は美しい文化のパズルだ。

彼の手を引き、入ったベーカリーは、ロシアにあるそれを
そのままcutしてブルックリンのその一角にpasteしたよう。
想像もつかない味を、美味しそうに魅せているパンの間を
二人興奮気味に見て回った。

何種類もあるピロシキの味を尋ねようと、
これは?これは?とキャッシャーに座っているおばあさんに聞きまくると、
最初の2個は答えてくれたが、その後は呆れた趣でこちらを見た。
床の上では、ロシア美人みたいなしなやかに美しい猫が、
セクシーに横たわっている。

ようやく選んだいくつかのパンを、奥のテーブルでコーヒーと一緒にいただく。
おばあさんは、何故か結局私たちを気に入ったとみて、
わざわざ丁寧に豆から挽いたコーヒーを淹れてくれる。
あまり英語が通じないので、こちらも日本語、英語とゴチャゴチャにお礼を言う。
ありがとう、とかおいしい、とか、そういうシンプルで
あたたかな人間の交わりは、いつも簡単に言葉の壁を突き抜ける。

二人して興味津々に店内を観察しながら、パンをかじる。
当たり前のようにおいしい。
ひっきりなしに入ってくるお客さんは、それぞれに違う肌の色、違う言葉を話しながら
活き活きとパンを選び、カウンターへ運ぶ。
誰にでもロシア語で対応し、全く同じトーンでテキパキとパンを売るおばあさんの
プロフェッショナルっぷり、かなり格好良い。

接客に追われるおばあさんに、もう一度お礼を言い、
また手をつなぎ、店を出ると、
マンハッタンへ戻る汚い地下鉄の駅の階段を駆け上った。

Brooklyn, Brooklynという彼の歌声に、私の笑い声が重なる。



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by akkohapp | 2007-08-22 21:16 | 大切な人