カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

肉食獣アメリカとサブプライム

サブプライム問題という火種を抱えたアメリカクレジット市場の暴発は
世界中のマーケットに大きな影響を及ぼした。

日本国内の景気回復のあおりを受けて、4月からじりじりと
1万7千円台から8千円台へと上昇を続けていた日経平均は
8月17日の終値で15,723円をつけ、前日比-874円の大暴落、
紙面には「ITバブル崩壊以来の下げ幅」との見出しがおどる。
円は17日、一時ドル対比111円をつけ、一ヶ月前に122円で
ふぅふぅ言っていたのがバカのようだ。

18日にはFRBが公定歩合を急遽引き下げ、
市場の混乱はようやく収束に向かいそうだ。

ところで、今回の世界同時株安の発端となったサブプライム問題とは何だろうか。

プロパーの金利で貸し付けるプライムローンに対して
本来ならクレジットを付与できないような
低所得者に対しても、高金利で住宅ローンの貸付を行うのが
サブプライムローン(Subprime lending)である。

そもそも今回一連の市場混乱は、
高い金利で住宅ローンを借りていた所得の低い返済者が
返済不履行に陥り、それが顕著化したことが発端となった。

その結果この住宅ローンのリスクを抱え込んで
運用を行っていた多くのファンドが破綻に追い込まれたり
格付けを下げる結果となり、市場の混乱を招いた
と要約することができるだろう。

やれベアスターンズだ、BNPパリバだ、と
混乱の中にも何だかカッコイイ「金融機関」の名前が連なったが、
そもそもこの住宅ローン返済不履行に陥った「人」は誰なのだろう?

相変わらず市場にはイマイチ人間の顔が浮かんでこない。

少し調べてみれば、世界市場を震撼させたこの問題も、
根底にあるのは、アメリカの深い貧困と資本主義の根が絡まりであり、
そこには常に生々しい人間の顔があることがわかる。

サブプライムローンは当初の返済額を減少させることで
住宅の購入を容易くし、
1990年代の半ばにアメリカでの住宅ブームを加速させた。
しかし、この貸付は当初期間経過後に返済額が急増するので
一定の収入がない低所得層にとっては、極めてリスクの高いローンだった。
それでも、加熱する住宅ブームの中、移住して間もない移民や、
低所得層に対しても、クレジット格付けをほぼしない
No Doc Loan(書類審査のない貸付)が半ば強引に行われ、
その結果そもそも返済能力のない低所得層が返済不履行に陥ったり、
家を失ったりといった問題が浮上した。

wikipediaによると、かつてアメリカでは黒人貧困地域に対する
その一定区域に居住する人に対しては融資をしないと
いったような金融機関による差別が行われていたという。
これはそれらの金融機関が地図上でその地域を赤線で囲ったことから
レッドライニングと呼ばれ、公民権運動の際に先頭を切って是正された
項目の一つであるらしいが、今回はむしろこういった低所得層に対する
「貸し過ぎ」が一連の問題の根源となった。

このような低所得層に対する積極的な貸付を
Predatory lending=略奪的貸出と言うが、
お金を手に入れ、家を手に入れ、貧困から抜け出したと思った
人々がジリジリと返済不履行のプレッシャーに呑み込まれ、
ついには破産、家も失うといった「人生を略奪」される絵は
アメリカ社会の病理を描いているように思える。

トリステイトの金融を管理するFRBNYは
従来、大量のアフリカ系アメリカ人、ラティーノのスタッフを雇用し
ローンの負債者調査員として各州に派遣をしていたのだという。
これは負債者の多く、そして返済不履行者の多くが
黒人であったり、中南米からの移民であったりという背景があったから
とのことであるが、現在は調査員の数が負債者に対して全く追いつかないのだという。
Fedがこのクレジット市場に対する現状把握をできなかったということが
今回のクレジット市場へのダメージを拡大させたとの見方もある。

NYの地価はうなぎのぼり、もちろんNYを通勤圏内とする周辺州も
簡単に家を持つことができるような価格ではない。
そのさなか、アメリカン・ドリームに象徴される大きな家を持ち、
新たな一歩を踏み出そうと、
身を粉にして働いたかもしれない労働者や
事情のよく分からない外国人、
犯罪率の高い黒人居住区から抜け出し、子供たちの教育を
一から考え直そうと思った家族を「エサ」にした
アメリカの資本主義というPredator(ライオンなどの肉食動物)は
食べても食べてもお腹いっぱいにならない飢餓道に落ちた鬼のようでもある。

市場の混乱は、東京の暑さがひと段落ついたのと共に
落ち着きを取り戻すかもしれないが、
一度食われてしまった彼らの「家」は戻ることはない。
[PR]
by akkohapp | 2007-08-18 13:27 | NYC, USA