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空港にて

  ・・・アメリカン航空・・・便、東京行きのご搭乗お手続きを開始いたします


受話器の向こうからはいくつかの国の言葉で、ボーディング開始を告げる
アナウンスが聞こえる。

  attention please....passenngers....
  アメリカン航空・・・・ご搭乗・・・・いたします・・・・

ニューヨークJFK空港の様子が目に浮かぶ。
あの天井から光がたくさん差し込むターミナルで
彼はスーツケースを抱え、雑誌でも買って
携帯を片手に私とこうして話しているのだろう。

「昨日は」

大変だったんだ、と疲れた声でつなげる。

「姉が子どもたちとやって来て・・・
姉にはもうずっと長いこと会っていなかったんだけど・・・
お金のことばっかりだよ。
久しぶりに会っても、日本での生活について聞くわけでもない、
僕がどんな仕事をして、どんな人にあったのかなんて興味の対象じゃない、
とにかく、僕の後ろに透けて見えるのはお金だけで、
そうやって自分の人生の重石を、いとも簡単に僕に乗せる。
引越しを手伝ってくれるわけでもない、
僕の身を案じてくれるわけでもないけれど、
困るとそうやってやって来て、僕を悲しくさせる。」
結局、子どもたちのためにピザ取ったけど
僕は後で泣いてしまったよ。」


そんな風に言われてしまうと、
もう何も言えなくなる。

昨日電話が来なくて、出発の前夜なのに連絡がとれないことで
めいっぱい溜まっていたイライラを、どこに吐き出したら良いのか
分からなくなる。

私が対峙しなければならない問題とは
まったく種類が異なる問題にぶつかっている彼に
私はどんな役目を負うことができる?
役目をもらうことすらできないような気がする。

そこにあるのは家族というとてもミクロで内的な問題なのだが、
それを覆いこむように取り囲む様々なコミュニティーの問題
グループが抱える課題を多く知っているからこそ
もっと複雑な気持ちになる。

どうしてこんなに階段のステップが違ってしまうんだろう?
チ・ヨ・コ・レ・イ・ト、パ・イ・ナ・ツ・プ・ル
と一緒に一段目から始めたはずなのに
どうして遥か上の段にいる人と、まだ三段目くらいにいる人と
こんなに差が出てしまうんだろう?
同じ家族なのに。


受話器の周りがにわかに騒がしくなる。
搭乗時間だ。

「これからボーディングだから。」

「うん、わかった。
成田のゲートで会おうね。」


結局そう言って、電話を切った。

これから14時間のフライト、
あまりにもたくさんのことを考えすぎなければいい。
映画でも見て、ワインでも飲んで果てしない昼の空を
一気に飛び越えて東京においで。
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by akkohapp | 2006-11-05 09:23 | 大切な人