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ありがとエンジェル。

何杯のソフトドリンクをお代わりしたのだろう。
テーブルの上は、グラスがかいた汗でかなり大きな水たまりができていた。

仕事が終わったのは8時を過ぎていて、
彼は1時間以上もファミレスで私を待っていてくれた。

「元気になるイベントがあるよ」

そう言って、薄いmp3プレーヤーのヘッドフォンを渡してくれた。
聞こえてきたのは、ミュージカル"Rent"の主題歌"Seasons of Love"だ。

「あぁ、懐かしいね!」

参加していた学生団体で、その年のテーマソングになった曲だった。

525,600 minutes, 525,000 moments so dear.
525,600 minutes - how do you measure, measure a year?
In daylights, in sunsets, in midnights, in cups of coffee.
In inches, in miles, in laughter, in strife.
In 525,600 minutes - how do you measure a year in the life?
How about love? How about love? How about love? Measure in love.
Seasons of love.

一年間は愛で測ろう!一年間の単位は愛なんだ、というメッセージの曲。

けれど、愛はどうやって測るんだろう。

落ち込んでいる私を気遣って、仕事の後にこうして待っていてくれた彼の優しさは
空になったジュースのグラスの数だったり
充血した目で笑って
「全然大丈夫だよー!」と言ってくれる声の明るさではかるのかな、
測れないな、と思いながら、待っていてくれたお礼を重ねて言う。

「いいんだってば!それより、これから、映画、見に行こう!」

その一言で、一緒に映画"Rent"を見に行った。

作品に登場する人物たちのカラフルさに、心が慣れるまでに少し時間がかかった。
そりゃそうだよな、いつも黒のスーツと白いシャツしか着てはいけない世界にいるのだから。
エンジェル、エイズとの闘い、ミミの孤独、そしてニューヨーク、
Rentの世界は、一生懸命そのときを生きることの大切さを教え直してくれる。

「今日しかないとしたら?明日死ぬとしたら?
キミはどう動く?どう生きる?誰と過ごす?」

元気で若い、少なくともそう信じている全世界の人間共通のテーマだ。

ほとんどの確率で、私は明日死なないけど、
100%の確率で明日という時間はあさってが来ると同時に死んでしまう。
なのに、自分はどこにいるんだろう。

朝の通勤電車の中で見たオーストラリア観光局がそこらじゅうに貼っている
"so where the bloody hell are you?" (意訳:「あんた、そこで何してんの?」)
というポスターを見て、突然泣けてきたのを覚えている。

どこにいるんだろう。何してるんだろう。


二時間半はあっという間に過ぎ、やっぱりエンジェルはエイズで死んでしまった。
けれど最後に暗くフェイドアウトしてゆくエンジェルの顔は、
女性的でも男性的でもない、人類的な美しさと高潔さを湛えていて、本当に美しかった。


お互い泣き疲れて、上映終了後は口数も少なく、東京駅まで歩いた。
夜が時空を変な風に曲げているようで、大手町が仮想現実のゲームの世界みたいだった。
駅に着くまでの間、何度となく映画の歌を二人でハミングした。


本物の優しさを持っているということは、とても強いことだと思う。
そんな優しさと強さに支えられてこそ、自分はヘナチョコになれるのかもしれない。

悲しいので泣いたんじゃない涙は温かく、夜は深く、
私は動き続ける自分の心臓と、喜怒哀楽の波とを抱えながら
ビルの向こうから確実にやってくる明日をまたちゃんと迎えられる気持ちになった。

ありがとね。
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by akkohapp | 2006-06-25 02:36 | 大切な人