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録。


by akkohapp
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806号室

ジャズを低くかけながら、夕方になって降り出した雨と
遠くで唸る雷の音を聞いていたらついウトウトしてしまった。

目を覚ますとCDはとっくに終わっていて、
雷の音の代わりにこおろぎの羽音が聞こえる。
雨音だけは少しターンダウンしながら、相変わらず庭の緑を濡らしていたけれど
その音も夏の音ではなく、もう初秋の雨音が鼓膜の奥に響く。

電気の消えた真っ暗な部屋の中で、
そんな風に雨とこおろぎの音を聞いていたら
忘れていた秋の感覚を淋しいくらい思い出した。
枯れ葉みたいなセーターのにおいや
ケヤキの落ち葉を踏む乾いた音、
リップクリームを塗る癖や
金木犀の可愛らしいオレンジ色なんか。

夏は毎日カラフルで
あっという間の打ち上げ花火だけれど
気が付けばショータイムは終わっていて
日常の生活に戻ってゆく。
日常の自分が戻ってくる。

毎日自転車をこいで、汗だくになりながら行ったバイト。
10分の短い休憩ごとに電話して、メールして
くたくたなのに夜になったら会いに行った。
なんだかニューヨークのセントラルパークの脇を歩いているような感覚になる
新宿御苑の隣の道路は、サルスベリのピンクが鮮やかだった。
セミが怖くて、マンションの廊下にいたデッカイやつに二人でビビッた。
ちょっと熟れ過ぎていた350円のスイカは、舌に載せるとピリピリした。
とうとう食べ切れなかったね、あのスイカも。
インド料理にハマって、二人で一ヶ月にカレーを5回くらい食べた。
結果、にきびがめっちゃできた。
クーラーの音と、いつも流れてた心地よい音楽。

夏の間、いつもそこにあったあの風景や音、
あの手の感触や
あのくちびるの柔らかさ、
全部なくなってしまう。
夏の部屋は、もう閉じられてしまう。

一つのキャラバンが終わる。
まるでなにもなかったかのようにテントを閉じて
けれど、背負ったサックには一緒に過ごした時間の重みを痛いほどに詰めて
次の旅を始める。
悠久に続く砂丘に風が吹いて、夏の匂いも、夏の音も消してゆくけれど
穏やかな秋の中にきっとまた新しい何かが待っているはずだ。
by akkohapp | 2005-08-23 21:36 | M&A Camp