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録。


by akkohapp
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富士山登頂 (1)

富士山に登ってきた。

五合目でポロっとバスから降ろされ、
そこからは一歩一歩、自分の足で標高3776メートルの頂上を目指す。
登山開始時間午後10時15分。

人間が作った都市で生活していては感じられない
山や地、自然が持つ力の強さが毛穴の一つ一つに染み入るのを感じながら
闇の中を延々と歩く。

左手に感じる果てしない樹海からは、
見えないけれど湧き上がってくる何かの気配が絶えずあって
自分の存在が針の一本よりも頼りなく思える。
闇を進めば進むほど、閉ざされていた自分の感覚が
研ぎ澄まされてくるのが分かる。
光がなくても冴えてくる視界、
3Dみたいに立体的に浮き上がってくる小枝が折れる音、遠くの空で唸る雷。
獣の糞、植物の香りに鼻腔が繊細に反応するようになる。
不思議に、どんなに歩いても喉はなかなか渇かない。

山に登ることは何となく偉大な何かを侵すようで畏怖を感じる。
富士山を登っている間、ずっと畏れを感じていたように思う。

七合目から下を眺めると
人々の持つ明かりが延々と続いているのが見える。
ところどころにある赤い鳥居を挟みながら、その小さな頼りない光が
視界に収まりきれないほど遠くまで点々と伸びてゆく。
イスラム教徒のメッカ巡礼の旅みたい、
そんな風に思うほど、それはとても厳かな光景で
頼りない存在の人間一人一人が、果てしない山腹を
静かに進む姿は、深く強く私の心を打った。


七合目を過ぎると、そんな周囲の様子に心を配っている余裕は全く無くなった。
七月だとういのに、トレーナーの上にジャケットを着込み、レインコートを羽織って
カイロを二個貼りながら前へ前へと進む。
気温は5度というところか。
軍手をはめた両手で、岩を掴みながら、上を目指すが
一つの岩を越えるごとに、心臓が恐ろしいほど早く打つようになるのを感じる。
酸素が薄い。

仲間と声を掛け合いながら、歩みを進めたが、
激しくなってきた雨についぞ足が止まる。
八合目の白雲壮。
午前3時、ご来光までは一時間半。
頂上まではあと4時間はかかるという声に肩がガックリ落ちる。
by akkohapp | 2005-07-17 21:08 | 花鳥風月